University Insightでは大学内の一研究者の視点から,大学をもっと良くするためにはどうすれば良いかを考えていきます.
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ものづくり企業は,世界で進展していく技術をキャッチアップすることで発展してきたという側面も持っています.自動車業界では世界中のクルマ(他社のクルマなので,以降では「他車」と呼びます)を買ってきて分解調査を行う専門企業(A2Mac1 JAPAN株式会社[1]など)があり,ベンチマークの一環として,そこから分解調査データを購入して分析することは,一般的に行われます.そこから,例えばボデー構造や材料の厚さ・強度レベルなどの情報が得られます.自動車メーカーは自車をより良くするために,他車の良いところをキャッチアップしようとします.そのうえで,他車よりも少しでも良くするにはどうすればよいか?を考えていきます.もちろん知財には十分配慮をして開発は進みます.
なぜ,このように他車を考えるかというと,お客さん目線で製品を開発しているからです.例えば,自動車の外板にはデントという評価項目があります.雹が降った時,ボデーに凹み(塑性変形)が残ることがあります.このとき,他車は凹んでいないのに自分の車だけが凹んでいたら残念な気持ちになり,満足度は下がってしまいます.即ち,製品の満足度は他との比較によって決まります.したがって,他車からよく学び,それよりも少しだけでも良くしておくことは大切です.
大学に目を移してみましょう.大学も受験生から選んでもらうことは大切です.最近のアンケート調査[2]によると,「大学名にこだわらなかった」が増え50%超になっています.また,「どういう基準で進路を選択すればよいか分からない」(56.0%),「進みたい進路に関する情報が不足している」(47.2%)との悩みが増加して来ています.受験生の悩みは,得られる情報量が格段に増えた一方で,それを整理することが困難になってきていることを表していると私は考えています.
私は,最近の高校の進路指導で使われている「スタビキ[3]」というシステムに注目しています.これは研究テーマから志望大学を探せるサービスで,科研費の研究情報がベースになっています.まさに自動車の開発でいうところの解体調査を,受験生が簡単にできるということです.受験生はスタビキで大学パンフレットからは見えない大学の研究の中身を見ることができるわけです.上記のアンケート調査結果の3つのポイントを鑑みると,このスタビキのシステムの登場も必然のように思えます.
いままでは,印象的なPR活動や知名度,大学自身が創り上げるブランドを参考にして大学を選択する場合も多くあったかと思います.しかし現在では,スタビキのようなサービスにより,受験生が「学びたい内容」にいままでより深く・正確にアクセスできるようになってきています.AIが発達する中で,この傾向はさらに加速するように思えます.
こうした環境の変化は,大学自身の戦略にも影響を与えます.大学自身は他大学ベンチマークをして施設や事務効率といった大学のOS(オペレーションシステム)部分は他大学よりも少しでも良くしておくことは当然重要です.そのうえで大学のアウトプット部分(教育・研究・社会貢献)についての自大学の強みを伸ばしていくことが,実質的にも広報のうえでも重要性が増しています.
まさに,見栄えを整えることの重要性は変わりませんが,中身もさらに整えることが大切な時代になってきているということです.なんでもクルマに例えるのが私の悪い癖なのですが,ワックスがけも大事ですが,オイル交換をしっかりとして走れるようにしておく必要があります.受験生はエンジンがどれくらい動くかを簡単に見ることが出来る時代になりつつあります.(K)
[1]https://www.a2mac1.com/ja/
[2]ベネッセ教育総合研究所 他:高校生活と進路に関する調査,https://benesse.jp/berd/shotouchutou/research/pdf/241220-1.pdf
[3]スタビキ,https://www.gyakubiki.net/stu-biki/
カバー画像:ChatGPTにより作成
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